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3層エージェントアーキテクチャ (No-Haiku)

更新 2026-08-18 10分で読めます GitHub で編集 ↗

MoAI-ADK はルーティングモデルのセットから Haiku を外し、残ったモデルを作業の性格に合わせて 3 段階に分けて使います。このページは、友人にこう説明できるように書いたページです — 「安いモデルを忙しい場所に組み込めばコストが節約できそうに見えるが、長い息の課題では正反対になる。だから MoAI は、高いモデルをより頻繁に使う方がむしろ請求額を減らすということをデータで確認し、その上で作業種別ごとに 3 段階の割り当て規則を定めた」。

ここでエージェント (agent、自ら判断して働く AI の助手) が課題を終えるのに使うモデルと、effort (推論の深さ、1 回の回答のためにモデルがどれだけ深く考えるかを決める 5 段階の low → medium → high → xhigh → max) が、コストを分ける 2 つの軸です。このページは、なぜこの 2 つの軸をこう割り当てたのか、なぜ Haiku を完全に外したのか、そしてこの「ティア」が自律性等級とは別の概念であるところまで扱います。

直感と現実が分かれる地点

よくある想定はこうです。「トークン単価の安いモデル (たとえば Sonnet · Haiku) を忙しい場所で回し、高いモデル (Opus) は重要な場所だけ大事に使えば、全体コストは下がるだろう。」トークン (token、モデルが読み書きする課金単位) の単価表だけを見れば、この想定は正しそうに見えます。

しかしこの想定が成り立つには、1 つの前提が要ります — 弱いモデルも結局、同じ課題を同じ回数で終えられるという前提です。長い息のエージェンティック課題 (ツールを何度も呼び、自ら計画を直し、最後まで行って初めて終わる課題) では、この前提が崩れます。弱いモデルは収束に失敗し、失敗したぶんステップを余計に回し、出力トークンをより噴き出しながら課題を終えられません。トークン単価は安くても、焼くトークン量がはるかに多いため、課題あたりの請求額はむしろ大きくなります。

これがこのページ全体の出発点です。請求額を決めるのは単価ではなく、完走効率です。

flowchart TD
    A["1 つのエージェンティック課題を終える"] --> B{"モデルは十分に強いか?"}
    B -- "強い (Opus)" --> C["少ないステップで収束"]
    C --> D["出力トークンが少ない"]
    D --> E["課題あたりコストが低い"]
    B -- "弱い (Sonnet·Haiku)" --> F["収束に失敗"]
    F --> G["ステップとトークンをかえって多く焼く"]
    G --> H["課題あたりコストがより高い"]
    E --> I["「安いモデル = 安い請求額」\nという命題が反転"]
    H --> I

データが語るもの — DeepSWE リーダーボード

上の直感を確認した出所は、DeepSWE リーダーボードの “All effort levels” ビューです (113 tasks / 91 repos / 5 languages、mini-swe-agent ハーネス)。effort を段階別に報告するため、運用点 1 つではなく、各モデルのコスト · スコア曲線の形からティアを導出できます。

モデルeffortスコア$/課題出力トークンステップ
Opus 5low58%$1.6620k36
Opus 5medium69%$3.2937k52
Opus 5high73%$6.0864k73
Opus 5xhigh73%$9.0792k89
Opus 5max74%$11.84118k99
Sonnet 5low31%$2.1936k77
Sonnet 5medium40%$4.0857k108
Sonnet 5high48%$7.4387k147
Sonnet 5xhigh50%$11.89121k186
Sonnet 5max54%$26.40214k268
Fable 5high69%$9.1857k59
Fable 5max70%$21.63119k88

MTok あたりの表示価格 (入力/出力): Opus 5 $5/$25 · Sonnet 5 $2/$10 (導入価格、2026-08-31 まで、以降 $3/$15) · Fable 5 $10/$50。

単価の逆転: Sonnet のトークン単価は Opus より低いのに、比較可能なすべての地点で課題あたりコストはむしろ高くつきます — Opus 5 の low は $1.66 で 58% を取り、Sonnet 5 の max は $26.40 で 54% を取ります。「安いモデルで回せばクォータが節約される」という通念は、長い息のエージェンティック作業では成立しません。請求額を決めるのが単価ではなく完走効率だからです。

データから読み取れる結論は 4 つです。

  1. Opus 5 はすべての effort で Sonnet 5 をパレート支配します。 Opus の low (58%、$1.66) が Sonnet の 5 地点をスコアとコストの両軸で上回り、Sonnet max (54%、$26.40) も例外ではありません。「忙しいエージェントは安いモデルへ回す」というルーティング命題は、長い息のエージェンティック作業では反証されます。
  2. 原因は単価ではなく完走効率です。 Sonnet は同じ課題セットを終えるのにステップを約 2.7 倍使います。課題を高くするのはトークン単価ではなく、そのように余計にかかったステップと出力トークンです。
  3. xhigh は Opus で純損失です。 high と xhigh はどちらも 73% なのに、xhigh はコストが 49% 余分にかかり、ステップも 22% 多く使います。Fable でも同じ場所で天井が平坦になります。膝を越えた effort が買うのはスコアではなく、トークンです。
  4. medium が膝です。 スコア 1 点あたりの限界コストは low → medium が $0.15、medium → high が $0.70 (4.7 倍)、xhigh → max が $2.77 (18.6 倍) です。デフォルトプロファイルが中核の実装エージェントを medium に固定する理由がここにあります。

なぜ Haiku を完全に外すのか

Sonnet ですら、長い息の課題では Opus より課題あたりコストが高くつきます。Haiku は Sonnet よりさらに弱い。だとすれば Haiku をルーティングに入れても、能力は増えずステップの無駄だけが増えます — Sonnet ですでに観測された完走失敗パターンが、Haiku ではより急勾配で現れます。

そこで MoAI は Haiku をルーティングモデルのセットから完全に除外します (No-Haiku ポリシー、SPEC-AGENT-ARCH-V2-001 §D)。Haiku はモデル enum では今も有効な値なので、ドキュメントやサンプル YAML には登場しますが、実際のエージェント割り当てマトリクスのどの升にも入りません。Haiku を外しても、コストを下げる軸は残ります — モデルクラスを変える代わりに、effort (推論の深さ) を段階的に調節する側です。これが 3 ティア構造の出発点です。

3 ティア割り当て規則

残ったモデル (Opus、Sonnet) と effort を、作業の性格に応じて 3 段階に割り当てます。ここでの「ティア」は作業種別に応じたモデル · effort の割り当て段階を指します。

flowchart TD
    START["エージェントに作業が入る"] --> Q{"作業の性格は?"}
    Q -- "1 回で終わり\n入力がコストを左右" --> T1
    Q -- "複数ターンをまたがないと\n終わらないマルチターン行" --> T2
    Q -- "1 回の決定がその後のコストを\n大きく左右する場所" --> T3

    T1["Tier 1 — 単発 Single-shot
Sonnet low
git mechanics · read-only search"] T2["Tier 2 — エージェンティック Agentic
Opus low / medium / high
spec · develop · audit · design · harness"] T3["Tier 3 — ピーク Peak
Opus max
develop · advisor (high プロファイルのみ)"] T1 --> NOTE["3 つのプロファイル (経済 · 標準 · 品質) すべてで固定"] T2 --> NOTE2["プロファイルが Opus effort の段階を選ぶ
経済=low · 標準=medium · 品質=high"] T3 --> NOTE3["呼び出し頻度が最も低い 2 行のみ
xhigh はどの升にも使わない"]

Tier 1 — 単発 (Single-shot)

1 回で終わり、反復より入力がコストを左右する作業です。弱いモデルを高くする原因、すなわちマルチステップの完走失敗がここでは現れないため、Sonnet の低い入力単価が実質的な変数になります。Sonnet の low effort でステップ数を最小に抑えます。担当エージェントは manager-git、Explore で、この 2 行は 3 つのプロファイル (経済 · 標準 · 品質) すべてで固定です。

Tier 2 — エージェンティック (Agentic)

計画、実装、監査、設計、ハーネス生成、ドキュメント化、E2E — マルチターン行の全部です。Opus の low がすでにどの effort の Sonnet よりもスコアが高く、課題あたりコストは低いので、この行のすべてを Opus が担います。プロファイルは各行を Opus effort の段階のどこに座らせるかを選びます — 経済列は low、標準列は medium、品質列は high です。担当エージェント: manager-spec、manager-develop、plan-auditor、sync-auditor、manager-design、builder-harness、manager-docs、e2e-tester。

Tier 3 — ピーク (Peak)

max effort は、high プロファイルで呼び出し頻度が最も低い 2 行、すなわち manager-develop と super-advisor にのみ使います。medium の上ではスコア 1 点あたりの限界コストが急勾配で上がるためです (low → medium は 1 点あたり $0.15、medium → high は 1 点あたり $0.70)。だから、1 回の決定がその後のコストを大きく左右する場所にだけピーク effort を割り当てます。xhigh はどこにも使いません — Opus で high とスコアが同じながら、コストだけ 49% 余分にかかります。

モデルティアと自律性ティアは別物です

このページの「ティア」は、どのモデルをどの推論の深さでどの作業に割り当てるかについての割り当て段階です。名前が似て混同しやすいのですが、MoAI にはこれと異なる「ティア」がもう 1 つあります。

情報

名前だけ同じで対象が異なる 2 つのティア

  • モデルティア (このページ) — エージェントがどのモデル · effortで働くかを作業種別ごとに定めます。対象はコスト · 品質です。
  • 自律性ティア (MOAI_AUTONOMY_TIER) — エージェントが人の承認なしにどこまで自律的に行動できるかの等級です。対象は権限 · 統制です。

両者は直交します。あるエージェントが高いモデル · 高い effort で働いていても (モデルティアが高くても)、人の承認なしに自律的に行動できるわけではなく、逆も同じです。自律性ティアは別個の環境変数と 3 段階モード選択で扱われ、詳しくは自律性ティアページで解説します。

設計意図と実装された動作を読み分ける

正直性の区別: このページは、設計段階の意図と実際に実装された動作を明確に分けて扱います。

設計段階 (.moai/reports/agent-architecture-redesign-v2-20260709.html) — v2 アーキテクチャの設計意図です。3 ティアモデルポリシーの原則と DeepSWE の根拠を示します。

実装された動作 — 実際のルーティングは単一のプロファイルマトリクスが担います。アクティブなプロファイル (high / medium / low) がマトリクスの 1 列を選ぶと、リゾルバが各エージェントの {model, effort} を決め、spawn 時点で model をランタイム引数として渡します。詳しいマトリクスはプロファイルマトリクスページを参照してください。

読む側でも、設計意図 (このページの DeepSWE 根拠) と実装された動作 (単一プロファイルマトリクス) を区別して見る必要があります。

このベンチマークが測れないもの

限界の明記: このベンチマークが測定の対象とするのはコーディングエージェントです。ドキュメントの作成、監査の判断、SPEC (要件仕様書) の作成品質は直接測っていないため、該当する行の配置は観測ではなく、マルチターンのエージェンティック作業と似ているだろうという推論に依っています。信頼区間も併せて見る必要があります — medium (69%±1) と high (73%±2) は重なりませんが、max (74%±4) は high と重なります。これが max を、ほとんど呼ばれない 2 セルに束ねてある理由です。すべてのデフォルト値は llm.agent_overrides でエージェントごとに元に戻せます。

Fable 5 について: Fable はコーディング作業ですべての effort で劣ります。Fable high (69%、$9.18) は、Opus medium (69%、$3.29) と同じスコアをほぼ 3 倍のコストで出します。だからどのマトリクスの升にも入れていません。モデル enum では今も有効な値で、GLM バックエンドの Fable スロットの配線もそのまま生きています — 変わったのはデフォルトだけです。

ハーネス自己進化との接続

3 ティア割り当ては、ハーネスが自ら良くなるループの土台です。観察 → 反芻 → 昇格と続く進化ループが本来の力を発揮するには、観察段階のルーティング決定から、適切なモデルに適切な effort で行われる必要があります。誤った割り当てのルーティングは観察そのものを汚し、汚れた観察は昇格段階で誤ったルールを生みます。詳しくはハーネス自己進化ページを参照してください。

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